(この記事はリライトしました。)
福岡のヴィンテージショップ「Tea with Dress」のインタビュー企画。刺繍作家のユッカリーナ・エルドゥさん。ルーマニア刺繍との運命的な出会いから、ハンドメイド作家として活動を始めるまでのストーリーを紐解きます。作品に込められた温かさと癒しの秘密に迫る、心温まるインタビューです。
「Tea with Dress」のAtsukoです。
ヴィンテージショップを始めて4年。さまざまな出会いを経験する中で、私はお客様一人ひとりの背景に深く興味を持つようになりました。たくさんのお店がある中で、私の店を選んでくださることは、本当に奇跡だと思っています。
この企画では、当ショップを訪れる魅力的な方々に焦点を当て、その方々の物語をインタビュー形式でご紹介します。第2回目は、心温まる東欧刺繍の作品を制作されている、刺繍作家のユッカリーナ・エルドゥさんです。
運命の出会い、ルーマニア刺繍との出逢い
当ショップでは、ヴィンテージアイテムだけでなく、国内で活躍するハンドメイド作家さんの作品もご紹介しています。しかし、作品の裏にある作家さんご自身のストーリーを深く知る機会はなかなかありません。そこで、今回はユッカリーナさんに、刺繍を始めたきっかけから現在までの歩みをじっくりと伺いました。
ユッカリーナ・エルドゥさんの作品は、ルーマニアの伝統的な「イーラーショシュ」刺繍とオリジナルの図案を組み合わせた、唯一無二のものです。 彼女と刺繍の出会いは、20代後半にさかのぼります。
もともと東欧の舞踊や音楽に惹かれていたユッカリーナさんは、ルーマニアを3度訪れるうちに、現地の民族衣装の美しさに魅了されていきました。しかし、この時点ではまだ「自分で刺繍をしよう」という気持ちはなかったそうです。


転機:刺繍との運命的な再会
人生の転機は、子育てが落ち着いた頃に訪れました。
伝統手芸研究家の谷崎聖子さんとインターネットを通じて知り合い、ルーマニア文化という共通の話題で意気投合。谷崎さんの著書を手に取ったユッカリーナさんは、独学で見よう見まねで刺繍を始めてみることに。
イラストや絵を描くことが好きだった彼女は、自分で図案を描き、試行錯誤しながら作品を完成させました。完成した作品をブログに載せたところ、驚くことに「欲しい」という声が寄せられ、オンラインショップに出品したバッグがすぐに売れたのです。

「初々しさの中に好奇心が伝わる作品」
この最初の成功体験が自信となり、家事の合間に創作活動を続ける原動力となりました。
勇気を出して一歩踏み出す
刺繍を通じて東欧の仲間が増えていく中、ユッカリーナさんは東京・千駄木にある「東欧民芸クリコ」というお店の存在を知ります。
勇気を出して、自分で作った刺繍作品をお店の方に見せたところ、とても褒めてもらえて、家に帰ってからもその喜びが忘れられませんでした。
「いつか、自分の作品をクリコさんに置いてもらいたい」という気持ちが強くなり、思い切ってメールで相談してみたところ、なんと快諾! ユッカリーナさんは拍子抜けするほどあっさりとした返事に驚いたそうです。きっと、クリコさんご自身が、作品だけでなくユッカリーナさんの人柄にも惹かれたのでしょう。


新たな挑戦と「Tea with Dress」との出会い
創作活動を続ける中で、ユッカリーナさんにとって最近のヒット作は、当ショップとのコラボレーションで生まれたティーコージーでした。

私が営む「Tea with Dress」では、ティータイムを楽しむためのヴィンテージアイテムを扱っています。紅茶好きにとって、ティーコージーは欠かせないアイテム。そこで、「ユッカリーナさんの刺繍で作れたら素敵だろうな」と思い、制作をお願いしました。

ポットが冷めないように厚めの中綿を使ったり、内側をイギリスらしいタータンチェックにしたりと、私の細かいリクエストにも応えていただき、試行錯誤の末、世界に一つしかない特別なティーコージーが完成しました。
「こんなに可愛いティーコージー、本国のイギリスへ行ってもなかなかお目にかかれませんよ!」と、私も大満足の出来栄えです。
東欧刺繍が教えてくれたこと
最後に、ユッカリーナさんにとって東欧刺繍とはどんな存在なのかを伺いました。
「自分にとって刺繍は癒しになっています」

毎日の生活の中で、楽しいことも辛いこともありますが、刺繍を刺していると無心になれて心が落ち着くのだそうです。それはまるで、寒い冬に家の中で刺繍をして過ごすルーマニアの女性たちと、心が通じ合うような感覚だと言います。
「その癒しが作品となり、お客様に喜んでいただけることが、何より嬉しいんです」

ユッカリーナさんの作品からは、彼女の穏やかな人柄と、一針一針に込められた温かさが伝わってきます。それは、手作りの作品にしかない、かけがえのない魅力です。
これからも、ユッカリーナさんの東欧刺繍の作品を、心から楽しみにしています。